中古トラックは、節税商材の中では珍しく制度の側に脆さがない。4年落ち以上の中古トラックを2年で償却する仕組みは、中古資産の耐用年数の簡便法として恒久的に存在し、封じられる気配もない。問題は制度ではなく器にある。トラックを匿名組合に束ねてファンドにした瞬間、それは金融商品になり、営業者の信用と登録の問題が前に出る。
仕組み
営業者が匿名組合を作り、投資家から1口1,000万円の出資を集める。組合は4年落ち以上の中古トラックを買い、運送会社に貸す。リース料から営業者の報酬を引いた分が投資家に分配され、5年後にトラックを売却して清算する。
税務は中古資産の耐用年数の簡便法による。法定耐用年数(大型トラックは5年)を全部経過した中古資産は、法定耐用年数の20%(最短2年)で償却できる。耐用年数2年の定率法の償却率は1.000なので、期首に取得すれば初年度にほぼ全額を償却する。期中取得なら月割で、業者は「半年で約40%、1年で約65%」と表記する。この償却が組合の損失として投資家に配られる。
現物型もある。法人がトラックを直接買って運送会社に貸す型で、こちらは金融商品ではない。ただし貸付用の資産なので、少額減価償却の特例や経営強化税制は使えない。中古の短期償却だけが残る。
期間
5年が標準。分配は年2%前後で5年均等、清算時に売却代金が戻る。5年間で出資額の約110%が戻る表記が多い。中途解約はできない。トラックの中古市場は厚く、5年後の売却先には困らないが、価格は市況次第である。
キャッシュフロー
1口1,000万円、年220万円の分配を5年、合計1,100万円(110%)の例。組合損益は1年目に減価償却で▲420万円、2年目▲120万円、3年目以降は黒字。実効税率33%。単位は万円。
| 年 | 投資・売却 | 分配・収入 | 損金(−)/益金(+) | 税効果 | 税引後CF | 累計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 0年目 | ▲1,000 | 0 | 0 | 0 | ▲1,000 | ▲1,000 |
| 1年目 | 0 | +220 | ▲420 | +139 | +359 | ▲641 |
| 2年目 | 0 | +220 | ▲120 | +39.6 | +260 | ▲382 |
| 3年目 | 0 | +220 | +210 | ▲69.3 | +151 | ▲231 |
| 4年目 | 0 | +220 | +215 | ▲71.0 | +149 | ▲82.0 |
| 5年目(清算) | 0 | +220 | +215 | ▲71.0 | +149 | +67.0 |
| 合計 | ▲1,000 | +1,100 | +100 | ▲33.0 | +67.0 |
「約110%」「半年で約40%、1年で約65%」は販売業者の表記。組合損益の年次配分は、期中取得の償却とリース料収入から仮に置いた。
税引前100万円の上乗せが、税引後で67万円。年率1.3%程度である。初年度の税効果は139万円で、オペリースのような大きさはない。この商材の初年度損金は出資額の4割程度で、しかも分配220万円が同じ年に現金で戻る。損金の大きさより、現金が毎年戻る構造が特徴になる。
PLへの効果
匿名組合損益として、1年目に▲420万円、2年目に▲120万円の営業外損失、3年目以降に約210万円の営業外収益が立つ。5年間の損益合計は+100万円で、税効果の合計は▲33万円。ここでも即時の損金は繰延べで、5年で全部戻る。
分配220万円は組合からの出資の払戻しと利益の分配が混ざっているので、PLの損益とキャッシュの分配は一致しない。1年目は損失420万円を計上しながら現金220万円を受け取る。この「損失を計上しながら現金が戻る」年が2年続くのが、この商材の使い勝手の良さであり、同時に「利益が出ているのに損金を取っている」と見える構造でもある。
査定
税務の論点は少ない。中古資産の簡便法は制度として確立し、組合損益の取込みも同じ。封じられた商材の「貸付除外」「管理委託除外」は経営強化税制と少額減価償却の話で、中古の短期償却には及んでいない。ただし、この構造がドローンや足場の少額資産スキームと同じ「貸して損金だけ取る」型であることは、当局も認識している。次に封じられる候補として名前が挙がる理由はここにある。
最大の論点は器にある。匿名組合の出資持分はみなし有価証券で、その募集や私募の取扱いは第二種金融商品取引業の登録が要る。ところが中古トラックファンドを売る業者のサイトに、登録番号の表示が無い例がある。営業者が誰で、その営業者が登録業者なのか、販売しているサイトの会社は何の立場なのか。契約前に登録番号を確認できない案件は、価格以前に見送る。
組成側の視点
トラックファンドは、組成する側から見ると「税務が固くて、器が緩い」商材だ。税務で否認される心配が少ない分、売り手は器の整備を後回しにしがちで、登録の無い会社が匿名組合を組成して売っている例が出る。出資者は営業者が破綻したとき一般債権者になる。トラックは運送会社の車庫にあり、出資者の手元には出資証券しかない。
買ってよい法人、買ってはいけない法人
営業者の第二種登録を確認でき、リース先の運送会社と車両の登録番号が開示される案件なら、利回り2%の繰延べ商材として成立する。登録番号を確認できない業者から買う法人は、税務ではなく金融商品としての最低限の保護を捨てている。