「ドローン節税」「足場節税」と呼ばれた手法は、2021年12月10日の令和4年度税制改正大綱で封じ込めが決まり、2022年4月1日以後に取得する資産から使えなくなった。税務通信は改正の理由を、いわゆるドローン節税で多用されていることを踏まえたものだと書いている。商材の名前が改正理由に事実上書かれた、珍しい例である。
封じられる前の仕組み
土台になったのは三つの制度だ。取得価額10万円未満の資産は購入した年度に全額損金にできる(少額減価償却資産)。20万円未満なら3年で均等償却できる(一括償却資産)。中小企業なら30万円未満まで年300万円を上限に全額損金にできる(租税特別措置法67条の5の特例)。どれも、事務負担を減らすための制度である。
商材はこの単価の壁を逆手に取った。ドローンは1機9万9,000円で売る。足場は1本単位で10万円未満だから、総額が数百万円になっても全額が購入年度の損金になる。LEDの照明器具も同じ理屈で売られた。買った法人はそれを自分で使わず、販売業者に貸す。業者はドローンをスクールや測量に、足場を建設現場に使い、法人にレンタル料を払う。数年後に業者が買い取って終わる。
法人から見れば、初年度に全額損金、翌年からレンタル料収入、最後に買取代金。利益が出た期の課税を先送りしながら、資産をほぼ元の価格で戻してもらえる。業者から見れば、機材の調達資金を「節税したい法人」から集められる。金融機関を通さない資金調達の器として機能していた。
何がどう変わったか
令和4年度改正で、法人税法施行令133条(10万円未満)、133条の2(20万円未満)、租税特別措置法67条の5(30万円未満)のいずれからも、「貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供したもの」が除外された。貸すために買った資産は、単価が小さくても通常の減価償却をしなければならない。
適用は2022年4月1日以後の取得等から。国税庁は同年6月に法人税基本通達7-1-11の2と7-1-11の3を新設し、「一時的な貸付は該当しない」ことと、「主要な事業として行われる貸付け」の例を示した。
なぜ封じられたか
会計検査院の指摘は確認できていない。税制改正大綱の「節税スキーム対策」として盛り込まれ、12月の大綱から翌4月の適用まで4か月で動いた。以後、大綱経由の封じ込めはすべてこの4か月周期で進んでいる。
問題視されたのは「自分で使わない資産を、損金のためだけに小口で大量に買う」構造だった。少額減価償却資産の制度は、事務負担の軽減が目的である。1機9万9,000円のドローンを100機買う法人に、事務負担の軽減は関係ない。
改正後に残ったもの
除外されるのは貸付用の資産だが、「主要な事業として行われる貸付け」は除外されない。通達7-1-11の3は、企業グループの管理会社がグループ内の法人へ貸す場合、下請業者へ製造用の資産を貸す場合、小売業者が駐車場スペースを貸す場合、不動産賃貸業者が賃借人へ家具などを貸す場合を例示している。本業としてレンタル業を営む会社は、従来どおり少額資産の特例を使える。
また、一時的な貸付は「貸付けの用に供した」に当たらない(7-1-11の2)。
令和8年度改正で少額特例の上限は30万円未満から40万円未満へ広がるが、貸付除外はそのまま維持される。制度は拡充しても、抜け道は閉じたままにする、という判断である。
その後、買った人に何が起きたか
改正は2022年4月1日以後の取得に適用されたので、それ以前に買った資産の損金が否認されたわけではない。ただし業者側の事業は続かなかった。ドローン販売で最大手だったドローンネットは、改正後にマイニングマシンの販売へ商材を乗り換え、2025年6月に東京国税局から約30億円の所得隠しを指摘され、同年12月に負債約1,445億円で破産した。経緯はマイニングマシンの記事で詳しく扱う。
購入した法人がその後に追徴を受けたかどうかは、公的資料では確認できていない。業者サイトには「否認・追徴に直面した」という記述があるが、一次資料はない。
組成側の視点
ドローンや足場の商材は、器が匿名組合ではなく「現物の売買+レンタル契約」だったので、金融商品取引法の登録が要らなかった。だから参入業者が増えた。しかし現物は、業者が倒れたときに「どこに何機あるか」が問題になる。1機9万9,000円のドローンを1万機売ったとして、それを誰がどこで数えているのか。管理の実態が薄い商材は、封じられる前に業者の側が崩れる。
次に封じられる商材を読む物差し
この改正で当局が使った型は「貸付用の除外」である。買った資産を自分で使わず、業者に預けて利回りだけ受け取る構造は、その後の改正でも「管理委託型の除外」として繰り返し使われた。今売られている商材で、買った現物を自分で使わないものは、同じ型で封じられる候補に入っている。