コインランドリーは、節税商材から設備投資へ戻された商材である。令和5年度改正で、運営を丸投げする型は中小企業経営強化税制から外れた。今も即時償却が使えるのは、自分で運営する場合だけ。だからこの記事は「節税の道具」としてではなく、「即時償却がついてくる事業」として、仕組み、期間、キャッシュフロー、PLを見る。
仕組み
法人が土地や店舗を借り、洗濯機・乾燥機・両替機・監視カメラなどの設備一式を3,000〜4,000万円で買う。フランチャイズ本部が設計、機器の調達、開業支援を行い、開業後は集金、清掃、利用者対応、機器のメンテナンスを分担する。改正前は本部に全部委託する型が主流だったが、改正後は「集金と清掃は自社で、機器保守は本部で」のような分担型に変わった。
税務は経営強化税制のB類型(投資利益率5%→7%以上、経済産業局の確認書)またはA類型(工業会証明書)で即時償却。ただし令和5年度改正で「コインランドリー業(主要な事業を除く)の用に供する資産で、管理のおおむね全部を他の者に委託するもの」が除外された。中小企業庁の解釈では、集金・清掃・利用者説明などの管理業務を一部でも自社で行えば「おおむね全部を委託」に当たらないとされる。
期間
洗濯乾燥機の寿命は10〜13年で、設備の耐用年数は機械装置として13年、または器具備品として扱う。業者の表記では投資回収に7〜12年。契約期間という概念は無く、店舗が続く限り続く。中途で撤退するなら、設備の中古価値は低く、原状回復費用が出る。
キャッシュフロー
設備4,000万円、純収益(売上から水道光熱費・賃料・消耗品・保守を引いた額)年400万円(10%)が10年続く例。即時償却が認められる前提、実効税率33%。単位は万円。
| 年 | 投資・売却 | 分配・収入 | 損金(−)/益金(+) | 税効果 | 税引後CF | 累計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 0年目 | ▲4,000 | 0 | 0 | 0 | ▲4,000 | ▲4,000 |
| 1年目 | 0 | +400 | ▲3,600 | +1,188 | +1,588 | ▲2,412 |
| 2年目 | 0 | +400 | +400 | ▲132 | +268 | ▲2,144 |
| 3年目 | 0 | +400 | +400 | ▲132 | +268 | ▲1,876 |
| 4年目 | 0 | +400 | +400 | ▲132 | +268 | ▲1,608 |
| 5年目 | 0 | +400 | +400 | ▲132 | +268 | ▲1,340 |
| 6年目 | 0 | +400 | +400 | ▲132 | +268 | ▲1,072 |
| 7年目 | 0 | +400 | +400 | ▲132 | +268 | ▲804 |
| 8年目 | 0 | +400 | +400 | ▲132 | +268 | ▲536 |
| 9年目 | 0 | +400 | +400 | ▲132 | +268 | ▲268 |
| 10年目 | 0 | +400 | +400 | ▲132 | +268 | 0 |
| 合計 | ▲4,000 | +4,000 | 0 | 0 | 0 |
「利回り8〜15%、回収7〜12年」は販売業者の表記。年400万円は中央付近の仮の数字で、立地と競合で大きく振れる。10年目の設備の残存価値はゼロと置いた。
この表は、即時償却が何であるかを最もよく示す。10年間の税引前キャッシュフローはゼロ、PLの損益合計もゼロ、税効果の合計もゼロ。初年度に1,188万円の税が減り、2年目から10年目に毎年132万円ずつ、合計1,188万円を払い戻す。即時償却は税を減らしていない。10年分の税を初年度に前借りしただけである。
PLへの効果
初年度のPLには減価償却費3,600万円(4,000万円の即時償却から純収益分を差し引いた見え方ではなく、償却4,000万円と売上・経費が別々に立つ)が乗る。本業の利益が3,600万円以下なら、この年は赤字決算になる。2年目以降は償却が無いので、純収益400万円がそのまま営業利益に乗る。
繰延べの価値は、初年度の1,188万円を9年間かけて返す間に、その資金で何を稼げるかにある。年5%で回せれば9年で400万円前後。回せなければゼロ。一方で、赤字決算の年に金融機関の格付けが下がり、翌年以降の借入金利が上がれば、繰延べの価値は消える。
即時償却ではなく税額控除を選ぶ道もある。B類型で取得価額の10%(資本金3,000万円超は7%)なら400万円の税額控除で、これは繰延べではなく減税である。毎年法人税を払う法人は、こちらが有利なことが多い。
査定
税務の論点は「自ら運営しているか」の実態にある。分担表を作っただけで、実際には本部の担当者が集金も清掃もしている店舗は、税務調査で「管理のおおむね全部を委託」と見られる。自社の従業員が月に何回店舗に行き、何をしたかの記録が要る。
商品の論点は立地である。コインランドリーは同じ商圏に2店目ができると売上が落ちる。年10%の純収益は、競合が来ない前提の数字である。メーカーとFC本部のサイトしか検索に出てこない領域なので、閉店した店舗の数と理由を本部に聞く。
組成側の視点
コインランドリーは、節税商材として売られていた時代に「設備の値段」が膨らんだ。丸投げ型では、本部の開業支援や運営の対価が設備価格に乗り、即時償却の取得価額を大きくしていた。改正で丸投げ型が外れた今、設備価格が下がっていなければ、その差額は何の対価なのかを見積書で問うべきだ。
買ってよい法人、買ってはいけない法人
自社の店舗や倉庫の隣に置き、従業員が集金と清掃に関われる法人には、即時償却か税額控除のつく設備投資として成立する。ただし年10%の純収益が10年続く前提で元本回収なので、事業として採算が取れるかが先である。決算対策のためだけに買い、店舗に行かない法人は、2023年に封じられた型そのものである。