トレーラーハウスは、この連載で唯一「即時償却」を謳わない商材である。売り文句は4年償却、固定資産税がかからないこと、10年の賃料保証、そして5年目以降の買取プランの四つ。節税商材というより、運営会社に貸す小さな不動産投資に近い。だからこそ、評価の軸は税務ではなく、賃料を払い、買い取ると約束している運営会社の信用に移る。
仕組み
法人がトレーラーハウス(シャーシの上に居住空間を載せた、車両として移動できる建物)を500〜900万円で買う。グランピング施設やホテルを運営する会社に賃貸し、月々の賃料を受け取る。運営会社が設置場所を用意し、宿泊客に貸し、清掃と管理を行う。
代表的な商品の条件は、販売代理店のLPによれば次のとおりである。賃料は月7.5万円、借上げ保証は最低10年で、11年目以降は1年更新(11年目と16年目に月5,000円ずつ減額)、1年目に3か月のフリーレントがある。5年目の満了時以降は運営会社の買取プランが適用され、5年目の買取価格は350万円。「予め決められた金額」とも「現在の市場時価により算出」とも書かれていて、年次により変動するとされる。運営会社の自社サイトには「不要になった場合は当社にて査定後、買い取る」とだけあり、350万円という数字は代理店のLPにしか無い。
税務の論点は二つ。一つは減価償却で、トレーラーハウスは随時かつ容易に移動できる状態で設置されていれば「車両運搬具」として扱われ、耐用年数4年の定率法で償却する。初年度の償却率は0.5で、900万円なら450万円。基礎に固定され、給排水や電気が恒久的に接続されていると「建物」と認定され、耐用年数は木造で22年になる。もう一つは固定資産税で、車両扱いなら家屋として課税されない。
期間
賃料保証は10年、最長20年。買取プランは5年目以降に適用される。つまり出口は二つあり、10年以上賃貸を続けて賃料で回収するか、5年目以降に買取で出るかを選ぶ。
業者は「20年で235%」と書くが、同じ販売代理店の二つのサイトで定義が違う。一方は20年分の賃料と節税効果を足した数字で買取を含まず、母数も900万円ではなく840万円。もう一方は買取350万円を含む。表の年間収入も、片方は84万円、注記は90万円(月7.5万円)と一致しない。数字の出所が代理店のLPだけであることを含めて、契約前に条件書で確認する。
キャッシュフロー
900万円で購入、月7.5万円(年90万円、表面10%)の賃料。償却は4年定率法(450、225、112.5、112.5)。実効税率33%。単位は万円。
10年賃貸を続ける場合(10年後の残価はゼロと置く)
| 年 | 投資・売却 | 分配・収入 | 損金(−)/益金(+) | 税効果 | 税引後CF | 累計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 0年目 | ▲900 | 0 | 0 | 0 | ▲900 | ▲900 |
| 1年目 | 0 | +90 | ▲360 | +119 | +209 | ▲691 |
| 2年目 | 0 | +90 | ▲135 | +44.6 | +135 | ▲557 |
| 3年目 | 0 | +90 | ▲22.5 | +7.4 | +97.4 | ▲459 |
| 4年目 | 0 | +90 | ▲22.5 | +7.4 | +97.4 | ▲362 |
| 5〜10年目(6年分) | 0 | +540 | +540 | ▲178 | +362 | 0 |
| 合計 | ▲900 | +900 | 0 | 0 | 0 |
5年目に買取プラン(350万円)で出る場合
| 年 | 投資・売却 | 分配・収入 | 損金(−)/益金(+) | 税効果 | 税引後CF | 累計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 0年目 | ▲900 | 0 | 0 | 0 | ▲900 | ▲900 |
| 1年目 | 0 | +90 | ▲360 | +119 | +209 | ▲691 |
| 2年目 | 0 | +90 | ▲135 | +44.6 | +135 | ▲557 |
| 3年目 | 0 | +90 | ▲22.5 | +7.4 | +97.4 | ▲459 |
| 4年目 | 0 | +90 | ▲22.5 | +7.4 | +97.4 | ▲362 |
| 5年目(賃料+買取350) | +350 | +90 | +440 | ▲145 | +295 | ▲67.0 |
| 合計 | ▲550 | +450 | ▲100 | +33.0 | ▲67.0 |
「月7.5万円」「10年保証」「5年目買取350万円」は販売代理店のLPの表記。1年目のフリーレント3か月は置いていない。10年後の残価と移設費用も置いていない。
10年賃貸を続けると、税引前のキャッシュフローはゼロ。賃料の合計900万円で元本900万円が戻るだけで、利益は10年後に残る建物の価値次第になる。税効果の合計もゼロで、初年度から4年目に178万円の税が減り、5年目以降に同じ178万円を払う。
5年目に買取で出ると、賃料450万円と買取350万円の合計800万円で、税引前で100万円の損失になる。買取価格が取得価額の約4割だからで、5年間の賃料でその差を埋めきれない。買取プランは「出口がある」という安心のためのもので、そこで出ると損をする設計になっている。代理店は「レンタル料と買取で7年で投資回収」と書いており、7年目以降の買取価格が下がることを考えると、実際に元本が戻るのは賃貸を10年近く続けた場合である。
即時償却商材と比べると、初年度の税効果は119万円と小さい。代わりに、償却が4年に分散するので赤字決算になりにくく、賃料が毎年入るので資金の拘束感が薄い。
PLへの効果
初年度に減価償却費450万円と賃料収入90万円で▲360万円。2年目は▲135万円、3〜4年目はほぼ収支ゼロ、5年目以降は賃料90万円がそのまま利益になる。10年の損益合計はゼロで、繰延べは4年である。5年目に買取で出る場合は、簿価ゼロの建物を350万円で売却した売却益が立ち、5年の損益合計は▲100万円になる。
固定資産税がかからない点は、PLに毎年効く。900万円の建物なら年10万円前後の固定資産税が10年で100万円になり、それが無い。ただし設置の仕方によっては自治体が家屋として課税する例がある。
査定
税務の論点は「車両か建物か」の一点にある。運営会社がグランピング施設として設置するとき、給排水を恒久的に接続し、デッキを付け、基礎に固定すれば建物になる。4年償却も固定資産税の非課税も消える。設置後に自分で見に行き、随時移動できる状態かを確認する。
商品と業者の論点は同じで、賃料10%を10年保証し、5年目以降に約4割で買い取ると約束している運営会社の決算にある。保証も買取も運営会社の約束であって、担保があるわけではない。運営会社が傾けば賃料も買取も止まり、トレーラーハウスは運営会社の敷地に置かれたままになる。移設には数十万から百万円単位の費用がかかる。別の商品では「買取保証を外部の一般社団法人で付保」と書くものもあるが、価格は非公開である。
組成側の視点
トレーラーハウスの「10年賃料保証」は、組成する側から見ると運営会社の借入と同じである。運営会社は建物を自分で買う代わりに、法人に買わせて賃料を払う。金融機関から借りれば金利は年2〜3%だが、この型なら「表面10%」を払っても、建物の調達資金を一切出さずに済む。5年目に4割で買い取るプランは、運営会社にとっては「5年間で賃料450万円を払った建物を350万円で手に入れる」取引で、法人にとっては100万円の損を確定する出口である。買い手は10%の賃料を受け取る投資家ではなく、運営会社に年10%で融資している債権者で、担保は建物、それは運営会社の敷地にある。
買ってよい法人、買ってはいけない法人
運営会社の決算を見て、10年の賃料を払い続けられると判断でき、設置条件を自分で確認できる法人には、繰延べの小さい賃貸商材として成立する。5年目の買取プランを「出口」として当てにする法人には向かない。そこで出ると元本は戻らない。初年度の大きな損金を期待する法人にも向かない。この商材の損金は4年に分散し、初年度は取得価額の半分である。