オペレーティングリースは、節税商材の中で最も古く、最も大きな金額が動き、最も設計が確立している。だからこそ、初年度の損金の大きさだけを見て買うと、10年後に同じ金額の益金が来る構造を忘れやすい。この記事は仕組み、期間、キャッシュフロー、PLへの効果の順に、出資3,000万円の例で分解する。
仕組み
リース会社が営業者となって匿名組合(または任意組合)を作り、投資家から出資を集める。組合は出資金と銀行借入で航空機(船舶、コンテナも同じ構造)を買い、航空会社に10年前後の期間でリースする。リース料は主に借入の返済に充てられ、投資家への期中分配はほとんど無い。リース期間の終わりに機体を売却し、借入を返した残りを投資家に分配して組合を清算する。
投資家が受け取るのは「組合の損益」の持分である。組合は機体を減価償却するので、リース開始から数年は大きな損失が出る。この損失が出資割合に応じて投資家の法人に配られ、損金になる。後半はリース料収入が償却を上回って利益に転じ、最後に売却益が乗る。
営業者は組成時に出資額の3〜5%を手数料として受け取り、運用中は管理報酬を取る。中途解約はできない。出資持分を第三者に譲渡する道はあるが、買い手は限られる。
期間
8〜12年が標準で、航空機は10年前後が多い。損失が配られるのは最初の2〜3年に集中し、初年度に出資額の70〜80%、2年目に10〜15%、3年目に数%という配分が典型である。4年目以降は損益がほぼゼロで推移し、最終年に売却益が一度に来る。
つまり投資家から見た期間は三つに分かれる。損金が来る2〜3年、何も起きない6〜7年、益金が来る最終年。「何も起きない」期間に資金は完全に拘束されている。
キャッシュフロー
出資3,000万円、初年度損失80%、2年目15%、3年目5%、10年目に出資額の105%で清算される例。実効税率33%、損失を吸収できる利益がある法人を前提にする。単位は万円。
| 年 | 投資・売却 | 分配・収入 | 損金(−)/益金(+) | 税効果 | 税引後CF | 累計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 0年目 | ▲3,000 | 0 | 0 | 0 | ▲3,000 | ▲3,000 |
| 1年目 | 0 | 0 | ▲2,400 | +792 | +792 | ▲2,208 |
| 2年目 | 0 | 0 | ▲450 | +148 | +148 | ▲2,060 |
| 3年目 | 0 | 0 | ▲150 | +49.5 | +49.5 | ▲2,010 |
| 4〜9年目 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ▲2,010 |
| 10年目(売却・清算) | 0 | +3,150 | +3,150 | ▲1,040 | +2,110 | +100 |
| 合計 | ▲3,000 | +3,150 | +150 | ▲49.5 | +100 |
数値は仕組みを説明するための例。実案件の損益配分と清算額は、営業者の想定リース料・売却価格・為替で変わる。回収率100〜105%は大手リース会社の公表事例の範囲。
現金の動きは単純で、最初に3,000万円を出し、10年後に3,150万円が戻る。その間の10年間、税引前の現金は1円も入らない。税引後で見ると、初年度に792万円の税負担が減るので手元資金の減少は2,208万円で済むが、10年目に1,040万円の税を払って清算する。10年間の税引後の合計は100万円のプラス。年率にすると0.3%程度である。
PLへの効果
投資家の法人のPLには、組合の損益が「匿名組合損益」などの科目で営業外に計上される。初年度は2,400万円の営業外費用、10年目は3,150万円の営業外収益。損金の合計3,000万円と益金の合計3,150万円の差は150万円で、これが税引前の実質利益である。損金が益金を上回ることはない。これが「繰延べであって節税ではない」の意味である。
繰延べに価値があるのは、初年度の税負担792万円を10年間、無利子で使えることにある。この792万円を本業に投じて年5%で回せれば、10年で約500万円の運用益になる。逆に手元に置いておくだけなら、繰延べの価値はほぼゼロで、営業者への手数料3〜5%(90〜150万円)と拘束の10年が残る。
もう一つ、決算書の見え方がある。初年度に2,400万円の営業外損失が出るので、本業の利益がそれ以下の年は経常赤字になる。金融機関の格付けは経常利益で見るので、借入の多い法人は融資条件に影響が出ることがある。売り手は税額の減少を語り、金融機関は赤字決算を見る。
出口の益金3,150万円を、10年目に別の損金とぶつけられるかどうかが設計の要になる。役員退職金、設備投資、修繕。それが無ければ、10年目に本業の利益と合算して課税されるだけで、繰延べは終わる。
査定
税務の否認リスクは低い。組合損失の取込みは長年の実務で確立し、大手リース会社が営業者の案件は第二種金融商品取引業の登録と実績開示がある。リスクは制度改正で、法人税基本通達の改正や組合損失の制限が入れば、途中の案件も影響を受ける。
商品リスクは為替と借り手にある。ドル建てのリース料と売却価格は円高で目減りし、航空会社が破綻すればリースが止まる。コロナ禍でタイ国際航空などの破綻があり、元本超過損失の可能性が現実になった。契約書の「元本超過損失」の条項と、営業者の過去案件の回収実績は契約前に読む。
組成側の視点
オペリースは、組成する側が最も安心して売れる商材だった。器も税務も確立し、投資家が損をしても「為替と航空会社のせい」と言える。だからこそ、組成手数料は最初に取る。3,000万円の出資で90〜150万円。10年後に投資家が受け取る実質利益の150万円と、ほぼ同じ金額である。
買ってよい法人、買ってはいけない法人
突発的な利益(不動産の売却益、保険の解約返戻金、事業譲渡)が出た年に、10年後に予定している退職金や投資へ課税を送りたい法人には成立する。毎年の利益を平準化する目的、資金の拘束に耐えられない法人、10年後の出口を決めていない法人には向かない。