日本語

中小企業経営強化税制とは。即時償却と税額控除の違い、A類型・B類型、指定事業、貸付除外、2027年3月の期限まで

節税商材のほとんどが「即時償却」の根拠にする中小企業経営強化税制を、制度の側から解説する。誰が使え、どの設備が対象で、A類型とB類型は何が違い、即時償却と税額控除はどちらが得か。手続きの順序、指定事業と除外、令和7年度改正の変更点、そして「経産省の認定を受けたから否認されない」という売り文句がなぜ違うのかまで。

節税商材の売り文句に出てくる「即時償却」は、そのほとんどが中小企業経営強化税制のことを指している。売り手は「経産省の認定を受けてから買うので否認されない」と言うが、この制度は設備投資を後押しするための制度であって、節税商材のために作られたものではない。制度の側から読み直すと、どの商材がなぜ通りにくいのかが見える。

制度の概要と期限

中小企業経営強化税制は、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて一定の設備を取得し、指定事業の用に供した場合に、取得価額の全額を初年度に償却する「即時償却」か、取得価額の一定割合を法人税額から差し引く「税額控除」のどちらかを選べる制度である。根拠は租税特別措置法42条の12の4。

適用期限は2027年(令和9年)3月31日までの取得等で、令和7年度改正で2年延長された。制度は2017年4月に始まり、2年ごとに延長と見直しを繰り返している。次の延長があるかどうかは、2026年12月の税制改正大綱で決まる。

誰が使えるか

対象は「中小企業者等」で、法人なら資本金1億円以下(ただし大規模法人に発行済株式の2分の1以上を保有されている法人などは除く)、個人事業主なら常時使用する従業員が1,000人以下。農業協同組合などの組合も含まれる。青色申告が前提である。

資本金1億円以下でも、直近3事業年度の所得金額の平均が15億円を超える「適用除外事業者」は使えない。資本金だけを見て「うちは対象」と判断すると、ここで落ちる。

対象設備と金額の下限

対象は新品の設備で、種類ごとに1台あたりの取得価額に下限がある。

  • 機械装置:160万円以上
  • 測定工具・検査工具:30万円以上
  • 器具備品:30万円以上
  • 建物附属設備:60万円以上
  • ソフトウェア:70万円以上

節税商材の多くは「器具備品」(自動販売機、両替機、GPUサーバー)か「機械装置」(洗濯乾燥機、充電器)として申請される。中古は対象外なので、中古トラックやヘリコプターの短期償却はこの制度ではなく、中古資産の耐用年数の簡便法という別の話である。

類型。A類型とB類型は何が違うか

令和7年度改正後に残っている類型は三つ。

A類型(生産性向上設備):設備のメーカーが工業会に申請し、工業会が「生産性が旧モデル比で年平均1%以上向上する」ことを証明する。令和7年度改正で、生産性の指標が単位当たり生産量、歩留まり率、コスト削減率などに見直され、指標ごとに単独で年1%以上が必要になった。証明書を出すのはメーカーであって、買い手でも販売業者でもない。証明書の無い機種は、どれだけ高性能でもA類型には乗らない。

B類型(収益力強化設備):買い手の法人が「この設備投資で投資利益率が年平均7%以上になる」という投資計画を作り、税理士または公認会計士の確認を経て、経済産業局の確認書を取る。令和7年度改正で要件が5%から7%に上がった。設備の種類は問わないが、投資計画の中身が問われる。

新類型(売上高100億円超を目指す企業向け):令和7年度改正で追加された。投資利益率7%以上に加えて、給与の増加など経営規模の拡大要件がある。対象額は60億円が上限で、この類型だけは建物も対象になる。小口の節税商材には縁が無い。

廃止された類型:C類型(デジタル化設備)とD類型(経営資源集約化設備)は令和7年度改正で廃止された。GPUサーバーが最も通しやすかった入口はC類型で、それが消えた。

即時償却と税額控除、どちらが得か

即時償却は、取得価額の全額をその年の損金にする。税額控除は、取得価額の10%(資本金3,000万円超の法人は7%)をその年の法人税額から差し引く。控除できるのは法人税額の20%が上限で、引ききれない分は翌年に繰り越せる。

2,000万円の設備を、毎年安定して利益が出ている法人が買う例で比べる。実効税率33%とする。

  • 即時償却:初年度に2,000万円の損金が立ち、税が660万円減る。ただし翌年以降は償却が無いので、本来なら毎年立つはずだった償却費の分だけ利益が増え、合計で660万円を返す。設備の耐用年数の間に払う税の合計は、通常の償却と同じ。減るのは税額ではなく、払う時期である
  • 税額控除:初年度に200万円の税が減り、それで終わり。設備は通常どおり償却するので、耐用年数の間に払う税の合計が200万円減る

毎年利益が出て法人税を払っている法人は、税額控除の方が合計の税負担が小さい。即時償却が有利なのは、その年だけ突発的に大きな利益が出た法人か、翌年以降に赤字が見込まれて償却費を使いきれない法人である。売り手が即時償却しか説明しないのは、初年度の数字が3倍大きく見えるからで、買い手の税負担が小さいからではない。

手続きと順序

  1. 設備を選び、A類型なら工業会証明書をメーカー経由で取る。B類型なら投資計画を作り、経済産業局の確認書を取る
  2. 経営力向上計画を作り、事業分野を所管する省庁に申請して認定を受ける。申請から認定まで通常1か月前後、証明書や確認書の取得を含めると1.5〜3か月
  3. 認定を受けてから設備を取得し、指定事業の用に供する

原則は「認定が先、取得が後」である。例外として、取得後60日以内に計画を申請すれば認められる。売り手が「決算3か月前までに申し込めば間に合う」と言うのはこの日程のことで、逆に言えば決算の1か月前に持ち込まれた案件は原則の順序を守れない。順序を間違えると、設備が本物で計画が認定されても、税制は使えない。

中小企業庁は2025年3月に、認定前の取得に関する柔軟な取り扱いを終了すると告知している。

指定事業と除外。ここで節税商材が落ちる

この制度は、設備を「指定事業の用に供する」ことが要件である。指定事業は製造業、建設業、小売業、卸売業、サービス業、不動産業、物品賃貸業、情報通信業など幅広いが、電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業以外の娯楽業などは含まれない。両替業や金融業も含まれない。

さらに、条文と改正で明示された除外がある。

  • 貸付けの用に供する設備:買った設備を他人に貸す場合は対象外。国税庁のタックスアンサーにも明記されている。運営委託契約が実質的に賃貸借なら、ここに当たる
  • 主として電気の販売を行うための発電設備:太陽光の全量売電はここで外れた
  • コインランドリー業・暗号資産マイニング業の管理委託型設備(令和5年度改正):主要な事業でなく、管理のおおむね全部を他者に委託する設備は対象外。自ら運営する場合は対象
  • 暗号資産マイニング業の設備(令和7年度改正):管理委託の有無を問わず全面除外

節税商材の構造は、ほぼ例外なく「買った設備を自分で使わず、業者に運営を任せ、分配だけ受け取る」である。この構造は、貸付除外か、管理委託型除外か、指定事業の壁のどれかに当たる。コインランドリーとマイニングは名指しで除外されたが、名指しされていない商材が同じ構造で安全という意味ではない。条文の趣旨は「自社の事業を強くする設備か」であり、そこから外れる設備は、名指しの有無にかかわらず税務調査で同じ物差しで見られる。

「経産省の認定を受けたから否認されない」がなぜ違うか

経営力向上計画の認定は、計画の内容が制度の要件に沿っているかを主務大臣が確認するもので、税務上の扱いを保証するものではない。認定を出すのは経済産業局や農林水産省などで、税務調査をするのは国税庁である。両者は別の役所で、認定書は「この設備は対象になりうる」という入口の確認にすぎない。

税務調査で見られるのは、その後の実態である。設備が本当にあるか、認定書の型番・価額と納品物が一致しているか、指定事業の用に供しているか、貸付けになっていないか、管理を丸投げしていないか。認定は取得前の書類で決まり、否認は取得後の実態で決まる。「認定を受けたので否認リスクが無い」という説明は、この二つを混同している。

令和7年度改正の変更点

2024年12月27日に閣議決定された令和7年度税制改正の大綱で、次のように見直された。

  • C類型(デジタル化設備)とD類型(経営資源集約化設備)を廃止
  • B類型の投資利益率要件を年平均5%から7%へ引き上げ
  • A類型の生産性向上の指標を見直し
  • 売上高100億円超を目指す企業向けの新類型を追加(建物も対象、上限60億円)
  • 暗号資産マイニング業の設備を全面除外
  • 適用期限を2年延長し、2027年3月31日まで

方向は一貫している。入口を狭め、要件を上げ、趣旨から外れた使い方を名指しで除外する。次の改正でどの商材が名指しされるかは、税制改正の歴史の周期から読める。

税務調査で見られるもの

  • 経営力向上計画の認定日、設備の取得日、事業供用日の順序
  • 工業会証明書の型番・メーカー・取得価額と、納品書・請求書の一致
  • 設備の所在(自社の事業所か、業者のデータセンターか)と、誰が管理しているか
  • 設備で行う事業が、自社の指定事業に入っているか
  • 運営委託契約の法的性質(業務委託か、賃貸借か)
  • 取得価額の妥当性(機械の代金に運営の対価が乗っていないか)

このうち買い手が自分で守れるのは、認定書と納品書の突合と、契約書の条文だけである。これは業者に頼まず自分でやる。

組成側の視点

節税商材の設計は、この制度の条文を逆から読むことから始まる。「器具備品30万円以上」だから両替機を器具備品として作り、「A類型は工業会証明」だから証明書の出る機種を選び、「認定が先」だから決算3か月前を締切にする。条文の要件は全部満たす。満たしていないのは条文の趣旨だけで、趣旨は税務調査で問われ、2〜3年ごとの改正で条文に書き足される。制度を逆から読んで作った商品は、制度が順方向に読み直されたときに消える。

関連する記事

出典
  1. 国税庁 タックスアンサー No.5434 中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)
  2. 国税庁 令和7年度 法人税関係法令の改正の概要
  3. 国税庁 令和5年度 法人税関係法令の改正の概要
  4. 財務省 令和7年度税制改正の大綱
  5. 中小企業庁 経営強化税制の適用に関する留意点(2025年3月)
関連する語: 中小企業経営強化税制 とは/経営強化税制 即時償却 税額控除 違い/経営強化税制 A類型 B類型/経営力向上計画 申請 流れ/経営強化税制 指定事業/経営強化税制 貸付 除外/経営強化税制 2027年3月 期限/経営強化税制 令和7年度改正/即時償却 繰延べ/工業会証明書 経営力向上計画
本記事は制度と商品の仕組みを一般的に解説するもので、特定の商品の購入を勧誘するものではありません。即時償却は課税の繰延べであり、税額が必ず減るものではありません。個別の税務判断は税理士にご相談ください。